新しい年を迎えました。一年の抱負をたてた方も多いかと存じます。
 能楽を大成した世阿弥(ぜあみ)の『花鏡(かきょう)』に「初心忘るべからず」とあまりにも有名な言葉があります。元々は、

「物事を始めたばかりの未熟な自分、初心者ゆえの失敗や恥を思い出す事によって、慣れによって傲慢になりがちな自分を戒める。」

という芸を極める為の口伝でありましたが、時代の流れとともに意味は随分とやわらかくなり、現代は、

「習い始めのころの謙虚で真剣な気持ち、常に志していたときの気持ちを忘れてはならない。」

と意味されています。どちらにしても耳の痛い言葉であります。私たちは、知らず知らずのうちに傲慢になり、初めて何かをしたときの感動や子供の頃の純粋な気持ちはどこかに置き忘れてしまったようです。

 世界諸国の飢餓や教育、内戦等の問題からすると日本は大変恵まれた国であります。しかし、こんなに満たされていても、私たちは愚痴をこぼしたり、不平を言ってしまうばかりでなく、謙虚さが失われ傲慢さが目に付きます。傲慢がこころを曇らせ、こころの持ち方一つで、皆が平和に暮らすことが出来ることに気付かないようです。人間として生を受け、人間として生きていくことの意味は、自分を戒め、謙虚な気持ちで日々を過ごし助け合うことではないでしょうか。

 政治も然り、仕事も然り、夫婦や友人の付き合いも然り……。新年にあたり「初心忘るべからず」の言葉を再吟味して人間としての責務を果たし、誰もが住み良い平和な世の中にしたいものであります。

合掌

(谷口 明信)




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